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岡田章『ゲーム理論入門』4章までの個人的まとめ

はしがき

ゲーム理論とは、相互作用する主体を扱う数学的理論である。そのため、非常に普遍的であり、あらゆる学問の共通言語になりつつある。
またゲーム理論を学ぶことで、他者理解によって利害の対立を超え協力関係を築く理性と感性(ゲームマインド)を育てることが期待される。


第1章ゲーム理論とは何だろうか

社会には、次の四つの特徴を持つ勝負事や事象が多くある。
1,プレーヤーの存在
2,プレイヤーは目標に向け動く
3,プレイヤー間は相互作用を持つ
4,ルールがある

これを数学的にモデル化したものをゲームと呼び、これを扱うのがゲーム理論である。

ゲーム理論には「どう行動するのが合理的か」と考える模範的理論の方法と「実際にどう動くか」を考える技術的理論の方法がある。これらは二つの視点として共に大切である。

ゲーム理論ノイマンモルゲンシュタインが作り、ナッシュがさらに発展させた。ノイマンとモルゲンシュタインの2人は経済学に数学の考え方を取り入れた点で偉大である。また、ゲーム理論は多くの自然科学と同様にトイモデルから一般的な系へと考察の幅を広げていくという形式をとる。

ゲーム理論において、人間は合理的(目的を実現しようとする)と理性的(他者の立場に立って考える)というふたつの性質を持つと仮定される。実際の人間は公平性など、これ以外の性質も持つが、今のところこの仮定の下で多くの事象が説明されている。この成功は人間社会のみに限らず、進化論など広範な分野に及ぶ。

ゲーム理論で用いられる、いくつかの用語をまとめておこう。
系の基本的な構成要素を「プレイヤー」と呼び、プレイヤーの大きさ(例:企業や個人など)は考えている系による。プレイヤー同士は時に協力することがある、これを「提携」と呼ぶ。プレイヤーは各「手番」ごとに行動を行い、プレイヤーの行動計画を「戦略」と呼ぶ。ゲーム開始から現在までに行った行動の系列を「履歴」と呼ぶ。ゲーム終了時にはその「結果」がわかる。結果は「選好順序」によって評価される。選好順序を数値化したものを「利得」と呼ぶ。
2人のプレイヤーが存在し、お互い対立するゲームを「ゼロ和ゲーム」、非対立のゲームを「非ゼロ和ゲーム」と呼ぶ。非ゼロ和ゲームでは協力が起こりうる。
プレイヤーが行える行動やゲームの規定のことを「ルール」という。ゲームはプレイヤー全員がルールを完全に把握している「情報完備ゲーム」とそうでない「情報不完備ゲーム」に分けられる。現実の形の多くは、情報不完備ゲームである。
行動の分析の結論は、「」と呼ばれる。

アダムスミスは社会は二つの合理性が混在したゲームであると述べた。即ち経済学においてゲーム理論は非常に有効な手法である。2つの合理性は個人合理性社会合理性であり、これらの対立により我々の社会は混乱に襲われる。


第2章選択と意思決定

プレイヤーの取りうる選択の集合Xは全順序集合である。この順序を選好順序とよび、\rightharpoonupで書く。 u:X \to {\mathbb R}効用関数と呼ぶ。

ここで、選好順序x \rightharpoonup yと実数の大小関係u(x) \leq u(y)が一致するとき、u(x)X序数的効用と呼び、大小関係のみが選択に影響し、その値の大きさは意味を持たない。
結果が確率的に決まる選択対象z \in Zを、リスクを含む選択対象と呼び、これに対して期待効用u(z)はその期待値として定義する。(Zはリスクを含む選択対象の集合)

すなわち、zを確率p_ix_iが起こるというリスクを含む確率対象とするとき、u(Z)=\sum_{i}p_iu(x_i)である。
また、X \cup Zも順序が一意に決まり、その順序はu(X)の大小関係に一致すると仮定する。この仮定を期待効用仮説とよぶ。これはXが全順序集合であっても、u(x)が一般の序数的効用では満たされない。Xに独立性と連続性を更に課すと、期待効用仮説が成り立つu(x)が定数倍を除きただ1つ存在する。このu(x)ノイマンモルゲンシュタイン効用関数という。(???)
u(x)が上に凸か下に凸かによって、プレイヤーのリスクへの考えがわかる。上に凸のとき、そのプレイヤーはリスク回避型であり、下に凸の時リスク愛好型である。
リスクを含む選択対象では、確率が客観的に定まっていない、もしくは分からない場合も多い。これらに対し、プレイヤーは主観的に確率を推測し、それに基づいて期待効用を最大化しようとすると考えられる。これをベイジアン仮説と呼ぶ。
確率については省略。


第3章戦略ゲーム

ゲームには様々なものが考えられ、それぞれのプレイヤーの行動によってその個々の利得が定まる。これらの関係をとらえるには利得表を用いるのが便利である。
また、プレイヤーのとりうる行動には複数の戦略を確立的に混ぜる「混合戦略」がある。


第4章ナッシュ均衡

ほかのプレイヤーのなんらかの行動aに対して、利得を最大化させる行動を最適応答と呼ぶ。ここで、それぞれのプレイヤーの行動が最適応答であるとき、そのような行動の組をナッシュ均衡と呼ぶ。
キチンと定義する。各プレイヤーの利得をf_i({\bf x})とする。ここで、{\bf x}は各プレイヤーがとった行動の組である。行動の組
{\bf s}=(s_1,s_2,\cdots,s_n)ナッシュ均衡点であるとは、{\bf s}からプレイヤーis_iを任意のx_iに変えたものを{\bf s}→x_iとすると、これとの間に
f_i({\bf s}) \geq f({\bf s}→x_i)
が全てのiについて成り立つことである。
つまり、プレイヤーiだけが行動を変化させても利得が増えない状態を言う。
混合戦略を認めると、ナッシュ均衡点は必ず存在する。これをナッシュの定理という。
ナッシュ均衡点が複数あるとき、どの点に落ち着くかは微妙な問題である。
あるプレイヤーiの行動a_iが、iの取りうる他の行動b_iより必ず高い利得を与えるとき、a_ib_iに対して優位と呼ぶ。またこのとき、ある戦略a_iiの取りうる他の全ての行動に対して優位な時、a_ii支配戦略と呼ぶ。支配戦略は(存在すれば)必ず最適応答である。全プレイヤーが支配戦略をとる時、それはナッシュ均衡点である。この状態を支配戦略均衡と呼ぶ。
プレイヤーが自身の利得の最低保証(マックスミニ利得と呼ぶ)を最大化しようとする戦略をマックスミニ戦略と呼ぶ。ゼロ和2人ゲームにおいて、2人ともマックスミニ戦略をとるとき、これがナッシュ均衡である必要十分条件は2人のマックスミニ利得が一致することである。
混合戦略を認めるとき、2人のマックスミニ利得は一致する。これはマックスミニ定理と呼ぶ。

 

感想

私はダメな物理屋(学部生ごときがこう自称するのは毎回はばかられるのですが…)なので、過度に数学的すぎると理解できない特性があるのですが、あまりに数学的でないのも理解できないのだなと思いました。面倒な生き物です。記事の中ではなるべく「数学らしく」再構築しましたが、それでもやはり理論の流れが見えずらいです。

物理屋のためのx(xは任意の学問)」が求められる…

内容はまあそうだよね、という感じですが、数学とかはまあそうだよねから出発したのに気づいたらわけわかんないところにいたりするので油断しないようにします。

境田太樹 『流体力学: 「流れ」を方程式で表すとは』前半の個人的まとめ

論理展開

1.流体の運動を数式で表す

 

隙間なく空間中を占有し、決まった形を持たず、力を加えると容易に変形する気体や液体をまとめて「流体」と呼ぶ。流体力学はこの運動を扱う学問である。

流体の運動方程式の導出は、流体を「流体粒子」と呼ばれる微小部分に分割し、そのそれぞれにニュートン運動方程式を適用することで行う。

ここで、以下の三つの点に注意が必要である。

a,流体の運動の追跡は、全ての流体粒子を区別し、そのそれぞれの運動を追跡することで行う。

b,流体粒子間の相互作用を応力と呼び、外力と区別して運動方程式に明記する。

c,流体粒子の質量は保存する。

 

すなわち、{\bf J}を応力、{\bf K}を外力として、

M\frac{d{\bf v}}{dt}={\bf J}+{\bf K}

が基本形となる。

 

以上の3つの点は、以降で詳しく議論する。



2.オイラーラグランジュの関係

 

前章で述べた、流体を無数の流体粒子に分割し、それを追跡することで解析する方法をラグランジュ的方法と呼ぶ。

一方で、空間の各点における流体の物理量を調べる見方をオイラー的方法と呼ぶ。オイラー的方法では流体粒子は出てこない。

 

2つの方法では、独立変数が異なる。オイラー的方法では、各点各瞬間の物理量を調べるので、独立変数は(x,y,z,t)となる。一方、ラグランジュ的方法では、流体粒子の区別のため、その初期位置を指定し、それに乗って物理量を調べる。ある流体粒子が持っている物理量が時間的にどう変化するかを見るわけである。すなわち、独立変数は(x_0,y_0,z_0,t)となる。ここで、x_0,y_0,z_0は初期位置を表す。

 

さてここで、流体粒子の考え方は便利だが、初期位置を独立変数にするのは不便すぎる。 そのため我々は、慣用的に「流体粒子は使うし、それに乗って物理量を調べるが、独立変数は(x,y,z,t)」というハイブリッドスタンスをとる。

流体粒子は移動しているため、ある流体粒子の持っている物理量Aの変化\frac {dA}{dt}(x,y,z,t)を変数にとって表すと、この移動による変化も勘定に入れなければならず、

\frac {dA}{dt}=\frac{\partial A}{\partial t}+u\frac{\partial A}{\partial x}+v\frac{\partial A}{\partial y}+w\frac{\partial A}{\partial z}

となる。(u,v,w)は考えている流体粒子の速度である。これをラグランジュ微分などと呼ぶ。

なお、右辺の後半3項を移流項と呼び

u\frac{\partial A}{\partial x}+v\frac{\partial A}{\partial y}+w\frac{\partial A}{\partial z}=({\bf v} \cdot \nabla)A

などと書くことがある。



3.連続の式

 

第1章cの内容を考えよう。流体粒子の質量が変化しないということは、

\frac {dM}{dt}=0

が成り立つということである。ここで、流体の密度を\rhoとして、M=\rho \delta Vを代入して変形すると、

\frac {d \rho}{dt}+\rho \nabla \cdot {\bf v}=0

となる。これを連続の式と呼び、質量保存則に相当する。

これより、運動中密度変化がない「非圧縮流体」では、連続の式は\frac {d \rho}{dt}=0より、

\nabla \cdot {\bf v}=0

となる。

なお、ラグランジュ微分を開くと連続の式は

\frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla \cdot(\rho {\bf v})=0

ともかける。



4.オイラー運動方程式

 

第1章aの内容を踏まえ、運動方程式を導出しよう。

応力には、面に対して垂直な法線応力と平行な接線応力がある。また、流体粒子にかかっている応力は、その合力を考える。すなわち、隣の流体粒子から力を受けていても、その合力が0であれば応力0と考える。

接線応力が0となるような理想的な流体を「完全流体」と呼び、これは流体の粘性を無視することに等しい。

以下、しばらく完全流体を考える。

法線応力{\bf J}は、圧力の勾配\nabla pに等しいことが簡単に示される。これより、流体の運動方程式は単位体積あたりに変更して、

\rho \frac {d {\bf v}}{dt}=-\nabla p+{\bf K}

となる。ここで、{\bf K}は単位体積あたりに働く外力である。この式をオイラー運動方程式と呼ぶ。

 

さて、流体の運動を完全に解析するとは、何が分かることだろうか。ひとつは各流体粒子の位置{\bf x}である。初期状態がわかると仮定すると、これは各流体粒子の速度{\bf v}がわかれば積分することで求められる。他には、密度や圧力、エントロピーや温度などの量が必要である。しかしながら、熱力学からこれらの量は2つがわかれば残りも求まることが知られている。よって、\rho,pの都合2種類の量がわかれば良い。

よって(u,v,w,p,\rho)の5種類がわかれば良く、そのためには5本の式が必要である。我々は既に連続の式と、オイラー運動方程式(各成分で3本)の4本の式は得ている。

残りの1本は圧力と密度の関係を与える熱力学的な関係式であり、これは個々の流体の特徴を表す。これを状態方程式という。状態方程式流体力学の範囲では導出されない。

 

状態方程式としてよく用いられるのは、圧力が密度のみに依存する(p =f(\rho))というものである。この仮定をバロトロピー性と呼び、これを満たす流体をバロトロピー流体と呼ぶ。

バロトロピー流体では、圧力関数Pなる量を

dP=\frac{dp}{\rho}

と定義することが多い。

 

境界面の方程式を

F(x,y,z,t)=0

とした時、ここにめり込まないという条件から、境界面上にある流体は

\frac{dF}{dt}=0

を満たさなければならない。これが完全流体の境界条件である。

なお、粘性流体の境界条件は、境界面上の流体粒子は境界面と同じ速度で動くというものである。

 

 

5.ナビエ・ストークスの式

 

粘性流体の運動方程式は、オイラーの方程式の右辺に接線応力を加えた形になる。この導出は一般的な運動方程式を用いたかなり煩雑なものである。(応力は、x面に対してy方向に働く力…のように9個出てくる。煩雑!)

結果的に、非圧縮ニュートン流体(粘性応力が速度の1回微分に比例するような流体)の運動方程式は、

\rho \frac {d {\bf v}}{dt}=-\nabla p+\mu \nabla^2 {\bf v}+{\bf K}

となる。これをナビエ・ストークスの式という。ここで、\mu粘性率と呼ばれる量である。



6.流線と流跡線

 

各瞬間において、速度ベクトルを接線に持つような曲線が引けるはずである。これを流線という。接線は2本以上存在しないので、流速が0となる点以外では流線は交わらない。この点はよどみ点と呼ばれる。

流線の線素ベクトルと、各点の速度は平行なので、流線の方程式は

\frac{dx}{u}=\frac{dy}{v}=\frac{dz}{w}

であたえられる。

ある場所で適当な閉曲線を考えた時、流線は交わらないので、この閉曲線上を貫く流線群は管をなす。これを流管という。

 

流体粒子の時間発展を考える時、その軌跡を流跡線という。この方程式は速度の定義より、流体粒子の変位を[tex:d{\bf x}]としたとき

\frac{d{\bf x}}{dt}={\bf v}

と与えられる。

 

流線と流跡線は明らかに異なる概念である。流線は各瞬間に対して定められているが、流跡線はそうではない。流体の速度場が時間とともに変化する時を考えればわかりやすいだろう。



7.渦度と循環

 

速度場の回転

{\bf \omega}=\nabla \times {\bf v}

渦度と呼ぶ。

渦度0の流れを渦なし流れ、渦度が0でない流れを渦あり流れと呼ぶ。渦なし流れのとき、ベクトル解析の公式から

{\bf v}=\nabla \phi

なるスカラー関数Φが存在する。Φは速度ポテンシャルと呼ばれる。

流線、流管の渦度版を渦線渦管とよぶ。

 

運動方程式に回転を作用させることで、保存力下であれば次の渦度方程式が得られる。

\frac{d}{dt}(\frac{{\bf \omega}}{\rho})=\frac{1}{\rho} ({\bf \omega} \cdot \nabla){\bf \omega}

これより、初め渦度が0であればその後もずっと0であることがわかる。これをラグランジュの渦定理と呼び、渦ありと渦なしを区別することが有用な理由である。

 

閉曲線Cに対し、

\Gamma=\oint_{C}{\bf v} \cdot d{\bf r}

循環と呼ぶ。

 

同一の渦管を一周する任意の閉曲線に対し、循環は一定であることが知られている。

 

 

感想

卑近な現象に興味がわかない質なので、流体力学は長いことノータッチでしたが、理論的なところは美しいですね。ただ、仮定がめちゃくちゃ多いので「今何を仮定しているか」、「その仮定は妥当か」を常に考えないといけないのが難しいところです。

個人的にラグランジュ的、オイラー的描像の話はしないほうが分かりやすいんじゃないかと思います。

深谷賢治『解析力学と微分形式』第2章の個人的まとめ

第2章ベクトル場と微分形式

論理展開

回転や発散、勾配は、実は座標変換と相性が悪く不便である。相性がいいように工夫されたのが、微分形式である。

§2.1

今形式的にベクトル場を

{\bf W}=W^1\frac{\partial}{\partial x^1}+W^2\frac{\partial}{\partial x^2}+ \cdots

のように書くと、(x^1,x^2,\cdots)から(y^1,y^2,\cdots)へのベクトル場の座標変換は

{\bf W}\to{\bf W'}=W^1\sum_{i}\frac{\partial y^i}{\partial x^1}\frac{\partial}{\partial y^i}+W^2\sum_{j}\frac{\partial y^j}{\partial x^2}\frac{\partial}{\partial y^j}+ \cdots

となる。これを用いて、2次元平面上の発散の座標変換を考えると、

div {\bf W}\to div{\bf W'}=div {\bf W}+(\frac{\partial^2 y^1}{\partial y^1\partial x^1}+\frac{\partial^2 y^2}{\partial y^2\partial x^1})W^1+(\frac{\partial^2 y^1}{\partial y^1\partial x^2}+\frac{\partial^2 y^2}{\partial y^2\partial x^2})W^2

となり、明らかに不変でない。

 

§2.2

さて三次元空間上と一般の次元上でn次の微分形式とその間のウェッジ積\wedge、そして外微分を定義する。(定義は省略)

このとき任意の微分形式uに対し次が成り立つ。

d(du)=0

また逆に、df=0であるとき、f=duなる微分形式uが存在する。

これは、ベクトル解析で学ぶ公式や、ポテンシャルの存在の一般化になっている。

 

次に、微分形式の座標変換ともいえる「引き戻し」を定義する。「引き戻し」は、可微分同相写像\phi:U \to Vで結ばれた2つの空間U\subset \mathbb{R}^n,V\subset \mathbb{R}^mに対し、終域V上で定義された微分形式をその定義域Uに映し直す操作である。微分形式の引き戻しは、ベクトル場の座標変換と異なり違う次元の空間同士を結ぶことが出来ること、写像の終域から定義域に移すことに注意しよう。

\phiによって定まる引き戻しを\hat{\phi}と書くことにすると、次の性質が成り立つ。

\hat{\phi}(du)=d\hat{\phi}(u)

これは外微分が引き戻し(座標変換)不変であることを表す。

 

微分形式における形式的な記号dx^iは、関数f=x^iの外微分ともみなせる。これが微分形式の座標不変性のもととなっている。

例えば、次の座標変換u=x,v=x+yを考えたとき、微分形式では問題なくdx=duだが、偏微分(ベクトル場)は\frac{\partial}{\partial x}=\frac{\partial}{\partial u}+\frac{\partial}{\partial v}となってしまう。

 

§2.3

次に、平らな空間上の微分形式の積分を定義する。微分形式は引き戻し不変であったため、向きを変えない変換\phiに対し

\int u=\int \hat{\phi}(u)

が成り立つ、またこれを用いれば曲がった空間上での積分\mathbb{R}^n上に引き戻すことで定義できる。(引き戻し不変性から\mathbb{R}^nへの戻し方はなんでも良い)

また、ホッジスター作用素を定義しておく(省略)と、ストークスの定理が一般化される。

3次元空間のベクトル場は微分1形式とも2形式とも見なすことができる、ここで1形式とみなされるベクトルを極性ベクトルと呼び、2形式とみなされるベクトルを軸性ベクトルと呼ぶ、また微分3形式とみなされるスカラーを疑スカラーと呼ぶ。例として、電場は極性、磁場は軸性ベクトルである。

 

§2.4

対称性を記述するためには無限小変換と呼ばれるものが使われる。ここでは、ベクトル場と無限小変換の関係を考える。

 

ベクトル場{\bf V}({\bf x})が生成する1径数変換群とは、初期状態点p{\bf V}({\bf x})積分曲線に乗ってパラメータs分だけ移動させた点\phi_s(p)へ対応させる写像の全体をさす。

s分だけ移動させてからt分だけ移動させるのと、t分だけ移動させてからs分だけ移動させるのは同じ...のように考えていくと、単位元も逆元も存在するのでこれは群をなす。パラメータがひとつだけなので、この群は\mathbb{R}と同じである。

 

次に群からある空間への作用を考える。作用とは、群の元gと空間の元xの組に対して、別の空間の元gxに対応させるような写像のうち、単位元によって点は動かず、結合律

(g_1g_2)x=g_1(g_2x)

を満たすものである。

 

例えば、直交変換Aと3次元ベクトル{\bf x}の組からなる(A,{\bf x})E(3)という群をなすが、これの\mathbb{R}^3への作用を

(A,{\bf x}){\bf v}=A{\bf v}+{\bf x}

のように定めると、これは合同変換となる。(逆に、合同変換は常にこの形で書ける)ここからE(3)ユークリッド合同変換群と呼ばれる。

 

ここまでの内容を整理しよう。あるベクトル場が存在する時、その1径数変換群はパラメーターtに応じてある点を別の点に移したのだった。これを言い換えると、ベクトル場が群\mathbb{R}から\mathbb{R}^nへの作用を定めたということである。

 

逆に作用が分かっている時、それを生成するようなベクトル場は常に存在する。これをその作用に対する無限小変換と呼ぶ。

作用が分かるということは、tに応じて各点がどのように移動するかがわかるということであるため、その節ベクトルを考えてやればそれが無限小変換になるだろう。

一般にベクトル場{\bf V}で、その1係数変換群が群Gの作用に一致するもの全体をGリー環と呼ぶ。

 

次に二つのベクトル場の間の括弧積を定義する。[{\bf V},{\bf W}]はある点のベクトル{\bf W}({\bf p})とその点から{\bf V}({\bf p})に乗ってほんの少しだけ移動した点のベクトル{\bf V}({\bf p}+\epsilon{\bf V}({\bf p}))の差を表している。

書き換えると、次のようになる。

[{\bf V},{\bf W}]=\sum_{i,j}(V^i \frac{\partial W^j}{\partial x^i}-W^i \frac{\partial V^j}{\partial x^i}) \frac{\partial}{\partial x^j}

なお、{\bf V}{\bf W}が生成する1径数変換群を\phi_t,\psi_tとするとき、[{\bf V},{\bf W}]=0\phi_t(\psi_s(p))=\psi_s(\phi_t(p))と同値である。即ち{\bf V}から{\bf W}に乗り換えて移動するのと、{\bf W}から {\bf V}に乗り換えて移動するので同じ点に到着するということである。

 

E(3)の部分群のうち\mathbb{R}と同型、すなわちひとつのパラメータで指定出来てそれも群になっているものを考えよう。その代表は並行移動と回転移動である。これらはそれぞれ(A,{\bf x}){\bf x}Aに対応する。

剛体は常に同型であるため、その運動(初期位置からの変化)は合同変換をパラメータtで指定したものになる。ただし、剛体の運動では鏡映反転はしないため、ASO(3)の元となる。つまり、剛体の運動はSO(3)と3次元ベクトルの組(R(t),{\bf v}(t))によって指定できる。

 

感想

物理屋にすると記号がいかつくてウッとなりますが、意味だけ追っていけばそんなに難しくはないかなという感じです。引き戻しはよくわかりませんが、どうも自然な概念らしい。

深谷賢治『解析力学と微分形式』第1章の個人的まとめ

第1章:ユークリッド空間上のハミルトンベクトル場

論理展開

§1.1

古典的な世界像においては、ある瞬間における物理状態が決定されれば次の瞬間における状態も決定される。即ちある瞬間における物理状態の変化の割合はその瞬間の状態によって記述される。これを数式で書くと

 \frac{d{\bf x}(t)}{dt}={\bf V}({\bf x},t)

となる。

この時、最も簡単な形は {\bf V} が時間によらない、即ち次の自励系の時である。

 \frac{d{\bf x}(t)}{dt}={\bf V}({\bf x})

この時、解{\bf x}(t)をベクトル場{\bf V}({\bf x})積分曲線と呼ぶ。

さらに自励系の中で最も簡単な形は、

{\bf V}({\bf x})=grad\,f({\bf x})

のようにベクトル場がある関数の勾配として与えられている時だろう。

しかし、この勾配ベクトル場に対しては、解{\bf x}(t)が周期解ならば必ず定常解、すなわち時間に依存しない解になってしまうという著しい特徴がある。惑星の運動などを考えてみても分かるように、これは明らかに現実の系を表現しきれていない。

 

§1.2

そこで次に単純な勾配ベクトル場を90度回転させた形を考えてみよう。二次元平面上ならばベクトル場は

{\bf V}({\bf x})=(\frac{\partial f}{\partial y},-\frac{\partial f}{\partial x})

となる。これをハミルトニアンf({\bf x})に対するハミルトン・ベクトル場と呼ぶ。

また、この下での方程式はハミルトン方程式と呼ばれる。ハミルトン方程式はきちんと周期解を表現できる。

また、

q=x,p=m\frac{dx}{dt}

として、ハミルトン方程式を書き換えると1次元のニュートン運動方程式に一致し、ハミルトニアンは力学的エネルギーになる。

ハミルトン系においては同一の積分曲線上において、ハミルトンニアンがtによらず一定であるという著しい性質がみられる。ハミルトニアンはエネルギーだったので、これは力学的にはエネルギー保存則を表わす。保存量の存在は方程式の解を求める上で重要である。

 

§1.3

二次元平面上の運動においては、四次元空間上のベクトル場とその積分曲線を考えることになる。この場合でも同様にエネルギーが保存する。エネルギーのように同一の積分曲線上において、tによらず一定な量のことを第1積分と呼ぶ。即ち、エネルギーは第1積分である。

一般に方程式を解くのに第1積分が1つでは不十分であり、我々はエネルギー以外の第1積分を見つけ出す必要があるが、第一積分機械的に求めるアルゴリズムはなく、一般には十分な量の第1積分がない例もある。

第1積分の例として、中心力場に対しては角運動量A({\bf q},{\bf p})={\bf q} \times{\bf p}が保存することが知られている。

 

§1.4

ハミルトン方程式を最大最小問題と見ることも可能である。これをしっかり議論するためには無限次元における2つの元の「距離」を定義する必要があるが、それには多くの困難を伴うため、ここでは重要な結果のみを述べる。

作用

S=\int_{0}^{1}L({\bf x}(t),{\bf \dot{x}}(t)) dt

に対し、ある{\bf x}(t)がSの極値を与えることと、オイラー-ラグランジュ方程式

\frac{\partial L}{\partial {\bf x}}-\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial {\bf \dot{x}}}=0

を満たすことは同値である。この結果は変分原理などと呼ばれる。なお、Lはラグランジアンと呼ばれる。

なお、

L=\frac{|{\bf \dot{x}}(t)|^2}{2}-V({\bf \dot{x}}(t))

とおくと、オイラーラグランジュ方程式運動方程式と一致する。

 

qとpからなる空間を位相空間と呼び、解析力学の基本的な考え方では、位置と運動量を対等に扱う。これにならって、qとpを独立に動かす変分原理を与えよう。ここでは、ハミルトニアンが時間に依存する場合も考える。

\mathcal{H}=\int_{0}^{1}({\bf p}(t)\cdot{\bf \dot{q}}(t)-H(t , {\bf q}(t),{\bf p}(t)))dt

なる量 ({\bf q}(t),{\bf p}(t))極値をとることと、 ({\bf q}(t),{\bf p}(t))がハミルトン方程式を満たすことは同値である。

ここで我々は、pとqの対称性からt=0,1におけるp,qの値を共に境界条件として要求するが、これは自由度に対して明らかに多い。したがって、ある初期条件条件に対しハミルトン方程式を満たす解が存在しないこともありうる。

 

以上で述べた二つの変分原理の関係について述べよう。ふたつの座標変数(x_1,x_2,\cdots,x_n,y_1,y_2,\cdots,y_n),(q_1,q_2,\cdots,q_n,p_1,p_2,\cdots,p_n)間に次の関係

q_i=x_i,p_i=\frac{\partial L}{\partial y_i}

があり、これが可微分同相、すなわち

det(\frac{\partial ^2 L}{\partial y_i \partial y_j}) =0

が満たされるとき、

H={\bf p}\cdot{\bf y}-L

と定めることで2つの変分原理は同値となる。

このとき、LとHの関係はルジャンドル変換と呼ばれる。

 

感想

こう見るとハミルトン方程式はなかなか自然に見えてきますね。

復習にちょうどいいです。

芥川龍之介『文芸鑑賞講座』 読書感想文

論理展開

文芸的素質が無ければ、如何な傑作を読んでも無意味である。ただ、文芸的素質の有無はハッキリと決定できるものでは無いので、自身には文芸的素質が自惚れてしまうのが幸福である。

文芸的素質に加え、訓練も必要である。訓練によって鑑賞の程度が深くなれば、人生が豊富になり、創作にも利益になる。創作は鑑賞の上に成り立つからである。

どういう風に鑑賞したら良いかという点について。創作者は自身の生命を託しうる言葉を使うため、鑑賞者はまず英語や古語など、その言葉を知ることが大切である。そして、鑑賞の際には認識的に理解すると共に情緒的にも理解することが必要である。このとき、批評や前知識に惑わされず、なるべく素直に読むことが必要である。素直に読んで、何の感銘も受けなかった場合は1度自身の人間的成長を待つことが求められる。

細部の美しさも注意深く鑑賞することも必要である。細部を見た上で大局の流れも見失ってはならない。大局を見る際、作品内の出来事や人物を我々の身の上に移してみなければいけない。ここでも人間力が求められる。

何を読めば良いかという点について。傑作,特に古典的名作を読むべきである。古典は簡単に価値を失うことは無く、良い物に親しまなくては感性が衰えていく。

最後にどういう議論を参考にすれば良いかという点について。これは作家達を参考にするのが良い。作家でなければ読み取れない微妙な言が多いからである。また、古典的な議論や、文学以外の芸術も同様に参考になる。

 

感想

凄まじいものを読まされた。今年ももう年の瀬だが、2023年どころかこれまでの人生で読んできたものはなんだったのだろうかと内省させられる。

約10000字ほどの文章だが、その全てが正鵠を射ていて、芥川先生が100年の時を超えて私に説教しに来たのではないかと感じられた。特に細部と大局を共に注意深く鑑賞すること、手当り次第読むのではなく、傑作を手に取ること、そして素直に読むことは、私が長い間失念していた価値観である。

また人間的成長が鑑賞に必要であるということ。これは私の中で因果が逆であった。もちろん優れた作品が人間的成長を促すこともあるかもしれないが、ウェイトを置くべきは現実世界そして自身であると再認識させられた。

心の訓戒として、刻んでおこうと思う。

 

心の師に出会ったときの衝撃とは、このようなものだったのか

ベルトランの定理〜地球は宇宙の彼方へと吹き飛ばされないの?〜

先日、サークルの学祭でベルトランの定理についてポスターを書きなさいとお達しが来たので調べましたが、紙面の都合で結構中身を魔改造せざるをえなかったです。勿体ないのでここに原本を置いておきます。物理選択の高校生をイメージして書きました。

 

1,イントロダクション

周知の通り、地球は太陽の重力によってその周りを回転している。だが、ある日突然、地球の軌道が大きく逸れて宇宙の彼方へ吹き飛ばされてしまうことは無いのだろうか?地球は太陽の周りを永遠に回り続けることが出来るのか?これは非常に重要な問いだ。もしかしたら明日突然太陽がなくなって、我々は氷漬けになってしまうかもしれない!

また、ニュートンケプラーの3法則、すなわち惑星の軌道が楕円や閉曲線であるという観測結果を元に重力が逆二乗則に従うという事実を発見したが、これは本当に正しいのだろうか?もしかしたら逆二乗則以外の力であっても円軌道や楕円軌道をとりうるのではないか?

これらの疑問を言い換えれば「中心力が作用する物体はどのような軌道を描くか?また特定の軌道を実現する力にはどのような条件が課されるか?」という問題になる。実はこれに対し、指針を与える定理が存在する。その定理はベルトランの定理と呼ばれ、1873年ジョセフ・ベルトランによって発見された。(実はベルトラン自身は、数学的な事実を示しただけで、現在よく見る形に書き換えられたのはもう少し後になってかららしいが。)

 

 

2,定理の主張

いきなりであるが、ベルトランの定理の主張を与えておこう。定理の主張は次の通りだ。

『任意の有界な軌道が、閉曲線となるような中心力はフック型かケプラー型の引力のみである。』

(定理の証明にはテイラー展開フーリエ級数展開などの知識を用いて面倒なので一旦省略。)まずは、この主張の意味を理解しよう。

「任意の有界な軌道」とは、無限遠まで飛んでいってしまうことがないような全ての軌道ということである。例えば地球から飛び立つロケットは第二宇宙速度を超えれば宇宙の果てへと飛び去ってしまうだろう。今回はそのような軌道は考えない。

「閉曲線」とは、一定時間の後に同じ位置かつ同じ速度ベクトルに戻るような軌道ということである。解析力学風に言うと、位相空間の同一点上に戻ってくる軌道。

「中心力」とは、その大きさが中心からの距離のみに依存し、向きは中心方向を示すような力のことを指すとする。(本当は引力でないといけないことも証明できるが、ほとんど自明。)

そして、「フック型」と「ケプラー型」とは、F=krやF=A/r²のように力の大きさが中心からの距離の1乗、もしくは-2乗に比例する力を指す。

なお、この主張からもわかるように、ベルトランの定理は重力に限った話ではなく、クーロン力のような力でも同様に成り立つ。

以上をまとめて、簡単な形に主張を書き換えると、『ある中心向きの力が作用する物体について考える時、無限遠まで飛んでいくことなく、有限領域でおさまる軌道が必ず閉じるのは、引力が中心からの距離の逆2乗か1乗に比例して強くなるもののみである』となる。

これは個人的な話ですが、私はベルトランの定理の主張を割と長い間、『ケプラー型かフック型以外の中心力の作用の元では、物体は閉軌道を描かない』と勘違いしてました。また友人は『ケプラー型、フック型の中心力の作用の元では物体は必ず閉曲線を描く』と勘違いしていたので、わりとこの定理は主張が捉えにくいのだと思われます。

 

3,その帰結

ベルトランの定理によって、我々は重力の形について決定することが出来る。観測から、多くの惑星は太陽の周りを楕円軌道、すなわち有界な閉曲線を描いていることが分かる。このような軌道が実現する中心力の形は定理からバネ型か逆二乗則に限られるが、バネ型の力は距離が離れるほどその力は大きくなる。これでは、地球は宇宙の果てにある星から凄まじい重力を受けていることになってしまい、不自然そうだ。これにより、万有引力の形は逆二乗則に従うことが示される。

また逆に、重力が逆二乗則であるとあらかじめ確かめられているならば、ベルトランの定理から地球はある日突然宇宙の果てに飛んでいくことは無いとわかる。(もちろん、太陽以外の星や相対論的効果、地球が質点でないために微小なズレは生じる)

我々の住む地球は、一旦のところ心配はなさそうである。

 

 

 

4,証明の概要(おまけ)


ベルトランの定理の証明の概要を与えておこう。

極座標におけるr、θについての運動方程式からtを消去することで、次の軌道方程式を得る。ここで、lは角運動量であり、uは距離r(θ)の逆数である。また、J(r)は力f(r)に依存する関数である。このとき、Jには遠心力も含まれることに注意が必要である。

u''(θ)+u(θ)=J(θ)

J(u)=-m/l²u²f(r)

証明では、Jを円軌道周りに4次までテイラー展開し、その結果得られる方程式の解をさらに3次までのフーリエ余弦級数展開で近似することになる。遠心力と中心力が釣り合う位置において、円軌道は実現される。逆に言えば、適当なエネルギーと角運動量を初期条件として与えることで任意の半径の円軌道は実現しうる。ここからのズレを考えることで、任意の閉曲線について調べあげているわけである。

なお、1次までのテイラー展開ではb²-3(bは有理数)に比例する力とまでしか限定できない。

 

 

5,物理と対称性、LRLベクトル

 

対称性と物理学には深い関係がある。例えばネーターによって発見されたネーターの定理によると、系に連続的な対称性があるとき、保存量が存在する。例えば、時間並進対称性がある(時間の原点をどこにとっても系が変わらないような時)とき、エネルギーが保存する。他にも空間並進対称性からは運動量保存則が、空間回転対称性からは角運動量保存則が、導かれる。

さて、ベルトランの定理の背景には方程式の対称性が潜んでいる。一般の中心力ポテンシャル下の運動では、3次元の空間回転対称性と時間並進対称性が成り立ち、ネーターの定理からエネルギーと角運動量の各成分が保存する。しかしながら、逆二乗則型の中心力の場合のみ、方程式に「数学的な」対称性が生じ、新たな保存量が生まれる。この保存量はラプラス・ルンゲ・レンツベクトル(LRLベクトル)と呼ばれるベクトルであり、近日点の方向が保存することを表している。時間によって近日点の向きが変わらないというのは、物体が周期運動すなわち閉曲線軌道を描くことにほかならない。(双円錐と平面の交わる曲線を描くことが示される。)このように、ベルトランの定理とLRLベクトル、数学的な対称性は互いに関連しあっており、数学と物理学の相性の良さを感じさせる。

余談だが、バネ型の中心力の場合は同じように「数学的な」対称性からデムコフ・フラッドキンテンソルと呼ばれる量が保存することが知られている。

また、LRLベクトルは角運動量ベクトルと4次元球面的な代数を張る。

また、数学的な対称性に限らず、対称性と物理法則というのは密接に関わっており、自然界にはどのような対称性があるのか、またそこからどのような物理法則が得られるのかという問いは現代物理学における重要なテーマとなっている。

(ここで述べた「数学的な対称性」は一般に力学的対称性と呼ばれる)

 

【参考文献】

ゴールドスタイン 古典力学(上)

磯崎 洋 解析力学微分方程式(数学と物理の交差点シリーズ1)

 

数式を使わず、ある程度のざっくりさで教えてくれるものがあればいいのにとは常に思っています。