チベスナダイアリー

仙台で物理やってます。

小話 集合写真撮影

4月2日。とある大学にて。

4月1日は入学式だった。入学式は大学での実施では無かったので、ほとんど1年生にとっては今日が初めての「登校」になる。

物理学系である彼らの登校は午後からであった。

期待と不安が入り混じる。

新入生オリエンテーション。話によると、教授や上回生が履修登録や学部のシステムについて教えてくれるらしい。

初老の教授が淡々と話を進める。

先輩は笑い話を混じえながら進行していく。しかし、笑いは少ない。

ミスは許されない。苦労して入学したのだ。細心の注意で、聞き漏らさぬよう、丁寧に内容をメモする。

 

「それでは、オリエンテーションはこれで終わりです。」

 

張り詰めていた緊張の糸は緩み、いつの間に仲良くなったのか1回生同士での雑談も聞こえてくる。

 

「この後は記念写真撮影になります。外に出てください。」

 

記念写真!そうか、入学式と言えば付き物じゃないか。身だしなみに気を使って来なかった自分に若干の後悔を残しつつも、外に出ていく。

 

「はい、ではここに3列ほどで並んでくださいね」

 

細かな調整が入る。外は4月だと言うのにまだ冬の寒さを残しており、少し苛立ちが募る。

上回生も後ろでなにやら動いている。そんなに位置が大切か?

 

「はい、それじゃ撮りますねー」

 

やっと撮影だ。

 

「おっと、その前に、物理学系では例年代々伝統があるんですよ。あるポーズで撮ってもらってるんですけどね?知ってるかな〜」

 

なるほど。どうせ「フレミングの法則」とかだろう。若干の苦笑が学生の間で広がる。まあ、少し幼稚だがそれでも…

 

いい波乗ってんねぇ!!!!!

 

!?!?!?!?

何事だ。突然後ろから爆音が響く。

新入生たちは一斉に振り返る。

そこには、上回生が先程まで用意していたのであろう馬鹿でかいスピーカーが並んでいた。

 

一度想ったら離さないわ♪

時には考えるのをやめて♪

 

 

曲は進む。まだ現実が受け入れきれない。

困惑するしかない。周りの新入生も何事かわかっていない。

 

余計な事は全て全て捨てよう♪

情熱を注げば今ほらやってくる♪

 

上回生が笑っている。

おもむろに教授がステージに上がる。

全ての視線が教授に集まる。

 

チャンスという波にのって♪

超えてみせるわ〜♪

 

上回生は教授の周りに集まる。

オーディエンスのバイブスもマックスだ。

あの寒さは、もうない。

 

今日の お前は!いい波乗ってんねぇ!!!!!

隣の あの子も!いい波乗ってんねぇ!!!!!

財布の 中身も!いい波乗ってんねぇ!!!!!

皆 今日も!いい波乗ってんねぇ!!!!!

ドォォォーーーーーーンンン…

 

「いや分かるかな〜コレ、粒子と波の2面性を表してるんだけどね…」

 

恐るべし。物理。

 

[終]

 

 

 

 

 

この物語はフィクションです。