論理展開
科学史のスタートとしてコペルニクスの地動説を挙げるところから本書はスタートする。このシリーズ(砂川先生)の特徴として、このように物理や科学の領域で必要な思考や歴史にも少し触れている。
まず、運動の法則の解説から始まる。ガリレイ変換や慣性質量と重力質量、力の概念、第1法則と慣性系の解説、等号の意味など、難易度に対して充実していると感じた。
運動方程式をいくつかの例を通してその解き方を学ぶ。放物運動、調和振動子、半径が一定の円運動などが扱われる。
その後、ケプラーの法則から万有引力の形を推測。それを元に潮汐について説明される。
線積分と偏微分の説明がされたあと、エネルギー積分の仕方を学ぶ。また、摩擦力についての説明もある。
ベクトル積について学んだ後、角運動量保存則を導く。これで1粒子の力学は終了。
他粒子系の力学へ話は移る。作用反作用の法則を元に、運動量保存則、他粒子系のエネルギーと角運動量の保存則を導き、ロケットの運動を解析する。
ここから連続体の力学(波動方程式)に入る。1次元の波動を基に、波の様々な性質を解説し、境界条件を満たすよう、偏微分方程式の変数分離法の解き方を学ぶ。
最後に解析力学の概要が書かれる。最小作用の原理、オイラー・ラグランジュ方程式、正準方程式についての紹介がなされる。
感想
力学の入門書です。平易な記述で基礎的なところを抑えているので、初学者、物理が好きな高校生、授業についていけない理系の大学生、文系の人が学ぶのにも適しているかなと思います。一方で剛体の力学、保存力の条件、万有引力の応用、極座標の運動方程式などは完全スルーされていたりと、これ1冊では物足りないかなとも感じました。波動方程式や解析力学についてはほとんど紹介程度です。大きい文字、120頁程度で力学の基礎が一通り抑えられるのでまとまっていて嬉しいですね。後は全体を通して注釈が沢山付いていて物理的な理解がしやすくなっています。砂川先生の物理観や、その後の分野との関連が伝わってくるものもあります。総評として、本当に大学レベルの力学への「入門書」だなあと思いました。
物理専門でない人にこそ読んで欲しい本