チベスナノート

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「畑浩之『基幹講座 物理学 解析力学』の第1章~第5章(Lagrange形式まで)」の個人的まとめ

ゼミに使用した本なので補足、追加要素が大量に入ってます

lagrange形式の部分です。

論理展開

第1章

まずはNewton力学の復習をしよう。慣性系とエネルギーについて確認しよう。

最小作用の原理の解説になる。まず、Lagrangianを用いよう。系の性質を表す量であるLagrangianは、一般化座標とその時間微分、そして時間の関数になっている。より高階の微分を含まないのは、系の時間発展が各時刻での位置と速度が分かれば完璧に決定することに基づく。

さて、これを用いて作用Sを定義しよう。系の運動は、このSが停留するように決定される。これを用いると、変分法を使うことでオイラーラグランジュ方程式が得られる。EL方程式は座標変換に対して共変である。これは一般化座標を用いた最小作用の原理から得られたことに対応している。なお、最小作用の原理には、始点と終点についての境界条件の任意性がある。(物理的な法則はわかった上で未来予知を目的とするNewton力学と、現実の事象から物理的な法則を導くラグランジュ形式では、議論の次元が違うことを意識(?))

このとき、作用が停留するかどうかにしか左右されないので、一般化座標と時間の関数Gの時間微分を足す任意性がある。(これはエネルギーやゲージ変換の任意性にも対応する(?))さらに、Lには定数倍の任意性がある。これは単位のとり方の任意性に対応する。Lの決定については後述。

変分法の応用もみておこう。多くの場合、オイラーラグランジュ方程式に帰着される。

 

第2章

(ゼミ担当範囲)

本書は対称性があるときのLagrangianの性質を一通り述べたあと、自由1粒子のLagrangianの決定をしている。しかし、本書の流れよりは、Lagrangianを決定した後対称性について再確認した方がわかりやすいと思うので、順序を入れ替えることにする。

Lagrangianの決め方には任意性がある。全く別の形のLagrangianも同一の運動方程式を導くことがあるのだ。これを前提としてLagrangianの決定を行う。

慣性系下自由1粒子のLagrangianを求めよう。空間並進対称性と時間並進対称性からL(v)、さらに回転対称性よりL(v^2)、ガリレイ変換の普遍性より∂L/∂v^2=const、定数をNewton力学と一致するように決めるとL=mv^2/2とわかる。

相互作用する複数の粒子からなる系のLagrangianを決定する。相互作用する2つの系からなるLagrangianはLall=L1+L2+Lintとなって欲しい。さらに、ふたつの系が無限に離れている時相互作用が0となって欲しい。(クラスター性) これを満たすようなLintをポテンシャル(のマイナス)と定める。また、各粒子をそれぞれ1つの系と見ることでLn=mv^2/2とできるので、L=K-Uとなる。

拘束がある系については後述。

外部の場から影響を受ける系については、外部の系を含めた大きな系を考えて、既知のq(t)を代入してやることで、Lagrangianの不定性に引っかかり消してやることが出来る。この場合でもL=K-Uとなる。

さて、以上を踏まえて対称性とLagrangianの形について調べよう。系に対称性があるとき、それに対応する変形を行ってもLは不変である。これは、その操作後の位置関数もEL方程式の解になることと同値である。

なお、特殊相対性理論ではガリレイ変換の代わりにローレンツ変換を用いてLagrangianを決定することになる。

 

第3章

対称性あるとき、系に保存量が存在するというネーターの定理を導こう。ある変換に対し、δL=(ある関数の時間全微分)=実質  0を2通りで導くことになる。

1つ目はEL方程式を使うやり方。これは「作用が最小となるような関数q(t)からの微小変化」を暗に示しており、これを使うと当然任意の微小変換に対してδL=0となる。イメージは極値をとる点ではどっちに少しずらしても変化ゼロ。

もう1つは系の性質に基づくものである。これにはEL方程式を使わない。ここで大切なのは、作用最小でなくても成立するという点である。イメージは、x方向に変化する分には値が変化しないような2変数関数f(x,y)=y^2

これらふたつの事実より、時間全微分同士を繋いでやると保存則が得られる。留意すべきなのは、一般的な教科書では下の図で言うと、下からδLを通って右に行くルートを通っているということ。また、単純な変換(時間並進など)の時はあたかも自明なように書かれて混乱することもあるので注意。

δL→(EL方程式)→0

(系の性質)

0

さて、では第2章でみた対称性からはどのような保存則が得られるのか。

  • 時間並進対称性→エネルギー保存則
  • 空間並進対称性→運動量保存則
  • 空間回転対称性→角運動量保存則
  • ガリレイ対称性→重心速度一定
  • ゲージ不変性→電荷保存則

などが挙げられる。

 

第4章

系に拘束条件が課される時、その一般的な処方は2通りである。

ひとつめは適切な変数変換(拘束条件を解く)によって自由度を下げてしまう方法。

もうひとつは、ラグランジュの未定乗数法を用いる方法。これは数学的な変形によって正当だと示すことが出来る。

 

第5章

系のラグランジアンが速度の二次形式と位置の二次形式の和で表されるときその運動は連成振動となる。また、ポテンシャルの平衡点の近傍の微小振動は連成振動と近似できる。連成振動の議論の次元を無限大にすることで場の理論へと至る。

連成振動の解法のキモは固有値を求め、モード分解をすることにある。モード分解によって、独立な調和振動子の問題へと帰着できる。

 

学習時の感想

読前

ゼミで使用するので購入。レイアウトなんかは好みでは無い。解析力学は6月頃に既に学習していたので、半分くらいは内容がわかるだろうと思いつつ取り組み始める。

第1章

いきなり最小作用の原理で驚く。取り組みにくそうな本だなと思ってしまった。他のゼミメンバーは解析力学初学なので、本の選択ミス感があるなと。フーリエなんかが出てきてギョッとするが、奇襲だったので耐え。ランダウと併読し始める。ラグランジアンに時間の二階微分以上がないかなんかはランダウから持ってきた。ゼミは初のオンライン。やっぱ黒板と対面の効果ってデカイな。

第2章

解析力学ってやっぱムズいなと思っていた矢先、ゼミ担当してねと言われて焦って行う。本の順序に文句を言わせて欲しい。ラグランジアンの決定は初めに持ってくるべきではないだろうか。対称性がある系でのラグランジアンの性質を初めにつらつらと述べているが、その説明を聞いていてラグランジアンってどんなものなんだよ!イメージ湧かねぇよ!ってなったので。この記事にもある決定の仕方は須藤とランダウも参考にしました。系の性質を決めるのはラグランジアンとEL方程式のみってことが伝わればよかった。ゲージ不変性は自分しか電磁気学を一通りやってなかったので、やる意味あったんけと思っている。ゼミでは雑談でプリキュアの話をしました。雑談は大事。ローレンツ変換は特殊相対論をやってから帰ってきます…

第3章

かなり苦戦した。ゼミの意義に疑問を持ち始める。δLに行く道がふたつあるってことに気がつくまでが大変だった。あとは他の本に乗ってる保存則の導出法が同じと思えなかったり。「EL方程式を使った」という記述に注意を向ければ良いと気がついたのは10時間ぐらい捧げた後だった。ガリレイ対称性からの保存則は知らなかった。難しかったが、ネーターの定理の一般形と重心速度保存則を知れたので初めて本書をやってよかったと思った。

第4章

簡単だー!ありがとー!

予め学習していたこともあって割とすんなり理解出来ましたー

その分話すこともなさそうですー!担当じゃなくて良かったー!!!

具体例が肝心ですね。

第5章

具体論になりました。ガチャガチャ言ってるけど、本質的には固有値を求めてモード分解しましょうってことなんじゃないかなと思います。1セメで錬成振動をやってて良かったですね。場の理論へと至る道だってことで前野にも載ってたんですねと今頃気がつく。ここは演習あるのみって感じもしますねー。頑張ります。

 

感想

解析力学の本としては本書が3冊目(前野→須藤→畑)ですね。ランダウ先生のも参照しましたが。間違いなく本書が1番深いです。特に第3章がかなり良いですね。色んな本を参照しましたけど、一般論まで書いている本は初めてです。1冊目では無理だろなあ…

仮想仕事やダランベールの原理からEL方程式を導いたり、運動方程式の書き換えとしてのEL方程式の記述がないのが気になりました。最小作用の原理からいきなり入るのは正統なやつですね。

構成や細かな記述に気になるとこも多かったです。特に、第2章はラグランジアンの決定が補足的にちっちゃく書いてあったのがうーんって感じですね。

結局迷った時に助けてくれたのはランダウな気がします。

第4章と第5章は具体的な問題を解くことがとにかく大事になって来る気がします。演習の答えが書いてあって嬉しい!

 ラグランジュ形式はこれで終わりですね。ハミルトン形式は量子力学なんかへの応用重視な印象が前からありました。量子力学も一応やったのでリベンジしたい…

考える余地があっておもしろかったです。解析力学が面白いんだよなあ。